フォントの分類、2つめの記事は、見た目による分類。歴史的な分類と似ている部分もあるけれど、より単純化された分類。
1 セリフスタイル(Serif Style)
セリフとは、文字の横線または縦線の終わりの短いライン、飾り。セリフがない字体に対し、セリフスタイルは、「セリフがある」という分類。
1-1 ヒューマニストセリフ(Humanist Serif)
Humanist Serif (Garamond Premier Pro)
カリグラフィー的なフォント。コントラストは比較的穏やか。なだらかなブラケットがあり、非対称のセリフを持つことが多い。幅広のペン先で、同じアングルに傾けて書かれた文字を再現している。
1-2 トランジショナルセリフ(Transitional Serif)
Humanist Serif (Baskerville Original Pro)
わずかにカリグラフィー的。ストレスは変則的で、強めのコントラストを持つことが多い。切り立ったブラケットのある非対称なセリフ、丸くふくらんだターミナルを持っている。
1-3 レイショナルセリフ(Rational Serif)
太い縦線と細い横線の、強いコントラストを持ってるフォント。直立したストレス。セリフは細く、ブラケットはない。ボールターミナル。ペンで描かれる字を再現している。
1-4 コンテンポラリーセリフ(Contemporary Serif)
Contemporary Serif (Swift)
スタイルは様々だが、ほとんどはエックスハイトが高く、コントラストは穏やか。大きく太めのセリフを持ち、開口部が開けている。より本文に向いた字体。
1-5 インスクライブド(Inscribed/Engraved)
Inscribed (Albertus)
カリグラフィー的な他のセリフスタイルと異なり、「彫られた文字」を基に作られた異色の字体。コントラストは通常弱めで、くさび形のセリフまたは広がったターミナルを持っている。またはセリフを持たないけれど、ストロークの最後が広がっているフォントもある。
2 サンセリフスタイル(Sans Serifs Style)
1800年代の中頃から登場。名前の通り、「セリフがない」字体。
2-1 グロテスクサン(Grotesque Sans)
Grotesque Sans (FF Bau)
フォントの分類001でも出てきたように、サンセリフスタイルが初めて登場したのは1800年代の中頃で、初期のサンセリフフォントは、あまりに奇妙だということで、グロテスクという言葉が名前につけられていた。
グロテスクサンは、トランジショナルセリフまたはレイショナルセリフに似た構造を持つ。コントラストは弱めで、ほぼ一定の比率で形づくられている。丸い形はオバール形であることが多く、正円ではない。
2-2 ネオグロテスクサン(Neo-Grotesque Sans)
Neo-Grotesque Sans (Helvetica)
グロテスクサンに似ているが、より均一な形をしている。コントラストは最小限。開口部は開けておらず、水平なターミナル。丸い部分はより正円に近くなっている。大きいサイズにするとよく目立つので、ディスプレイに向いている字体。有名なヘルベチカ(Helvetica)やユニバース(Univers)を含む。
2-3 ゴシックサン(Gothic Sans)
Gothic Sans (News Gothic)
グロテスクのイギリスまたはアメリカバージョン。グロテスクよりシンプルで変化のない形状。通常、エックスハイトが高く、コントラストは弱く、文字幅が狭くなっている。
2-4 ジオメトリック(Geometric Sans)
Geometric Sans (Futura)
この分類の中で、最も均一で、飾り気がない字体。円や四角の形に構築されたフォント。コントラストは最小限。丸い部分は、ほとんど正円に近いのも特徴。今大人気のフーツラ(Futura)もこのジオメトリックサン。
2-5 ヒューマニストサン(Humanist Sans)
Humanist Sans (Cronos)
名前からも分かるように、ヒューマニストセリフの相似形で、セリフの無い形。構造的にはカリグラフィー的で、他のサンセリフ書体よりコントラストは強め。開口部は広い。
ヒューマニストセリフに温かみと読みやすさが加わっていて、本文向きのフォント。カリグラフィーから離れていったサンセリフ書体が、またここでカリグラフィーに回顧しているところが興味深い。
2-5 ネオヒューマニストサン(Neo-Humanist Sans)
Neo Humanist Sans (FF Meta Pro)
先ほど登場した、ヒューマニストサンの現代版。エックスハイトは高く、アパーチャ(開口部)も広い字体。通常は、コントラストはあまり強くない。デジタル時代に対応して生まれてきたフォント。
3 スラブセリフスタイル(Slab Serifs Style)
スラブとは、「平たい板」のこと。セリフが平たい板状になっている字体。
3-1 グロテスクスラブ(Grotesque Slab)
Grotesque Slab (Clarendon)
グロテスクサンに似ているが、もっと四角ではっきりとしたスラブセリフを持つ。開口部は狭く、ボール状のターミナルが一般的。通常は太めの線で、装飾的でアイキャッチングな字体。
3-2 ジオメトリックスラブ(Geometric Slab)
Geometric Slab (Rockwell Std Roman)
ジオメトリックサンセリフに似ているが、ステムと同じ太さの、丸みのない四角いスラブセリフを持つフォント。全てのストロークが同じ太さで、コントラストは皆無。
洗練されたフォント。
3-3 ヒューマニストスラブ(Humanist Slab)
ヒューマニストサンセリフ に、丸みのない四角いスラブセリフ、またはくさび形のスラブセリフを加えたものが、ヒューマニストスラブ。コントラストは弱め。
4 スクリプト(Script)
手書きに似せた全てのタイプフェイスのこと。ほとんどのスクリプトは、斜めに同じ方向に傾いている。
Script (Kinescope)
見た目の特徴で分ける分類は以上。見た目で分けると少し頭もスッキリ整理されるような気もするが、「細か過ぎて伝わらないモノマネ選手権」を見ているような感覚にもなる。